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5~11歳の子どもへの新型コロナワクチンの効果・副反応と接種の考え方

5~11歳の子どもへの新型コロナワクチンの効果・副反応と接種の考え方

川崎医科大学 小児科学

中野 貴司
2022年03月14日

日本国内では、2022年2月末から5~11歳も新型コロナワクチンの接種対象となりました。小児(5~11歳)用のファイザー社製のワクチン(※1)のみが使用できます。有効成分の量は、12歳以上の3分の1(1回10μg)です。大人と同じワクチンを3分の1の量にして接種するのではなく、子ども用の製剤があります。1回に接種する注射液の量は0.2mL(大人は0.3mL)です。

接種の間隔は大人と同様で、通常は3週間の間隔で2回の接種を行います。本コラムでは、5~11歳の子どもがワクチンを接種する意義について解説いたします。

ワクチンに期待される効果

オミクロン株が流行する以前の検討結果ですが、海外で5~11歳用のワクチンによる臨床試験の成績が報告されています(※2)。ワクチン接種群とプラセボ群(ワクチンを接種していない人)を観察した結果、2回目接種後7日以降で約90%の発症予防効果が確認されました。すなわち、12歳以上の者に匹敵する有効率で、病気の発症を予防する効果が期待されます。

2回接種後の血液中の新型コロナウイルスに対する中和抗体価や抗体応答率(抗体価がベースライン値(1回目接種前)から4倍以上に上昇した被験者の数)についても、別の臨床試験で有効性が確認されている16~25歳におけるワクチン接種後の中和抗体価や抗体応答率と比較して非劣性(劣っていないこと)が示されています。すなわち、5~11歳でも、16~25歳と同程度に抗体価が上昇し、有効性が評価できるとされています(※2)。

ワクチンによる副反応

5~11歳の接種においても、12歳以上の者と同様に、ワクチンを接種した部位の痛みや倦怠感(からだがだるい)、頭痛、発熱など、様々な症状が臨床試験で報告されていますが、ほとんどが軽症から中等症で回復しており、現時点で得られる情報からは、安全性に重大な懸念は認められないと判断されます(※2)。

また、異なる臨床研究では、接種後の発熱などの副反応は、12歳以上の者と比べて低いと報告されています。(※3)。ただし、年少の子どもは自ら症状を申し出ることが難しい場合もあるので、その点は考慮が必要です。

ファイザー社製のワクチンはmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンに分類されますが、mRNAワクチン の接種後に若年者で注意すべき副反応として心筋炎/心膜炎があります。特に男性で、1回目接種よりも2回目接種後に、よりリスクが高いとされています。一方、米国での解析結果によると、5~11歳の男児における2回目接種後の心筋炎/心膜炎の報告頻度は、12~15歳及び16~17歳の男性と比較して低かったことが確認されています(※4)。現時点では、5~11歳の子どもでより心筋炎/心膜炎の副反応のリスクが高いということはありません。

どうして子どもにもワクチン接種が必要なのか

高齢者や基礎疾患のある大人とは異なり、子どもは新型コロナウイルスに感染しても重症化する頻度が低いと言われます。軽い症状で済むなら、副反応の可能性もあるワクチンをどうして打つ必要があるのかという意見があります。

しかし、感染症に対する備えとして最も大切なことは予防であり、その手段をしっかりと確保しておくことは大切です。その理由について説明します。

(1)流行が拡大して患者数が増えれば、重症者の数も増えます

当初は非常に少なかった子どもの患者ですが、2021年夏のデルタ株、2022年初頭のオミクロン株と、新しく出現した変異株の流行に伴い、全患者に占める子どもの患者の割合は徐々に増えています(※5)。重症化の頻度は低くても、患者数が著明に増加すれば、その分重症者も増えることになります。(図1)重症化率の高い病気でも流行が小規模であれば重症者数は少なくて済みますが、重症化率の低い病気でも流行が大規模になればより多数の重症者が発生します。したがって、流行が大きく拡大する感染症に対しては、ワクチンによる予防が重要と考えられます。

新型コロナウイルス感染症は、子どもであっても、入院して酸素投与が必要となったり(※5)、年長児でも熱性けいれんを起こしたり(※6)することがあると報告されており、決して油断はできません。やはり、ワクチンという予防手段は上手に活用することが大切です。

(2)基礎疾患のある子どもは重症化のリスクがあります

基礎疾患のある子どもは新型コロナウイルス感染症が重症化する場合があります。具体的に考慮すべき疾患は、慢性呼吸器疾患、慢性心疾患、慢性腎疾患、神経疾患・神経筋疾患、血液疾患、糖尿病・代謝性疾患、悪性腫瘍、関節リウマチ・膠原病、内分泌疾患、消化器疾患・肝疾患等、先天性免疫不全症候群、HIV感染症、その他の疾患や治療に伴う免疫抑制状態、高度肥満、早産児、医療的ケア児、施設入所や長期入院の児、摂食障害などです(※7)。

一方で、これらの子どもの多くは、一般的に予防接種を実施する際の「接種要注意者」でもあります。基礎疾患の影響で、体力が乏しかったり、接種後にワクチンと因果関係が無いものも含めて体調不良が出現するリスクが健常児より高かったりする子どもたちです。したがって、どんな予防接種を行う場合でも、十分な説明と同意に基づいて実施することが基本です。主治医と事前に相談し、接種のメリットとリスクを理解したうえで判断することが望ましいと考えられます。

中野先生コラム_図1-1.png

(3)ワクチン接種により重篤な病態「MIS-C」の予防が期待できます

「小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory Syndrome in Children (MIS-C))」は、心臓など多臓器 に影響が及ぶ重篤な病態です。新型コロナウイルスに感染した後、数週間以上を経て発症します。患者数の多い海外では半数以上に集中治療室(ICU)での治療が必要で、死亡例もあります(※8)。

米国に比べ、日本での発症者数ははるかに少ないですが(※ 9 、※10)、オミクロン株による小児の感染者数の増加に伴い、今後、MIS-Cの患者が増加する可能性があります。
12~18歳を対象に検討した成績ですが、米国においてワクチンの接種はその予防に効果があると報告されており(※11)、MIS-Cの予防が期待できます。

5~11歳の子どもへのワクチン接種

オミクロン株の健康への影響や、ワクチンの効果は、まだまだ情報が十分に揃っていないことは事実です。また、ワクチンによる副反応の頻度や程度など安全性に関する情報もこれからさらに集積してきます。

接種対象が低年齢の子どもの場合、副反応と思われる症状をうまく説明できなかったり、本人が気づかなかったりする場合もあります。周囲の大人が日頃から子どもの体調の変化に注意深く気をつけることは大切です。

現状では、5~11歳に対するワクチンについて、発症予防効果や重症化予防効果が期待でき、また、安全性も大きな問題は指摘されていません。また、オミクロン株のみでなく、新たな変異ウイルスの出現にも備える必要があります。感染症対策の基本であるワクチンによる予防は、大きな意義があると考えます。

5~11歳の子どもたちは、まだ判断能力が十分ではなく、保護者がワクチン接種の意義について説明し、子どもも保護者も納得した上で接種することが大切と考えます。本コラムや厚労省のリーフレット(※12)等を活用していただければと思います。

(参考資料)
※1:コミナティ筋注5~11歳用 添付文書(2022年1月第1版)(ファイザー(株))

※2:N Engl J Med. 2022; 386:35-46
(Evaluation of the BNT162b2 Covid-19 Vaccine in Children 5 to 11 Years of Age)

※3:Safety monitoring of COVID-19 vaccine among children and young adults in v-safe.(CDC)

※4:COVID-19 vaccine safety updates: Primary series in children and adolescents ages 5-11 and 12-15 years, and booster doses in adolescents ages 16-24 years.(CDC)

※5:J Pediatric Infect Dis Soc. 2021 Dec; vol10, Issue12: 1097-1100
(Clinical Characteristics of Hospitalized COVID-19 in Children: Report From the COVID-19 Registry in Japan)

※6:新型コロナウイルスに感染したお子さんが「自宅療養」される際のポイント(2022年2月10日改訂版)(国立研究開発法人国立成育医療研究センター)

※7:新型コロナウイルスワクチン接種に関する、小児の基礎疾患の考え方および接種にあたり考慮すべき小児の基礎疾患等(2022年2月14日)(日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会)

※8:小児COVID-19関連多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)診療コンセンサスステートメント(2021年9月16日改訂)(日本小児科学会)

※9:新型コロナウイルス感染症 診療の手引き第7.0版(厚生労働省)

※10:データベースを用いた国内発症小児Coronavirus Disease 2019 (COVID 19) 症例の臨床経過に関する検討(日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会)

※11:Effectiveness of BNT162b2 (Pfizer-BioNTech) mRNA Vaccination Against Multisystem Inflammatory Syndrome in Children Among Persons Aged 12-18 Years -- United States, July-December 2021.(CDC)

※12:(5歳から11歳のお子様へ)「新型コロナワクチン接種についてのお知らせ」(厚生労働省)

(注:本コラムに記載している内容は、筆者の見解となります。また、記載されている名称・呼称、および知見などは掲載時点のものです。)

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