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ワクチンと免疫の仕組み ー 新型コロナワクチン3回目はなぜ必要?

ワクチンと免疫の仕組み ー 新型コロナワクチン3回目はなぜ必要?

国立感染症研究所 治療薬・ワクチン開発研究センター

高橋 宜聖
2021年11月30日

はじめに

私たちの身の回りには様々な病原体が存在していますが、ご存知のように、例えば麻疹(はしか)や水痘(水ぼうそう)など、一度罹ったら二度と罹らない感染症があります。これは私たちの体内に侵入した病原体の情報を、生体の防御機能である免疫が記憶するためで、この免疫の記憶を上手に利用したのがワクチンです。

ただし、免疫の記憶力は必ずしも一生続くわけでなく、時間の経過と共に低下することがあります。
ここでは、免疫とワクチン接種による予防効果の仕組みを紹介し、新型コロナワクチンの追加接種(3回目接種)はなぜ必要なのか、できるだけ分かりやすく解説します。

免疫とは?

免疫は体内に侵入した病原体を異物(自分以外のもの)として認識し排除することで、自分の身体を正常に保つという大切な働きのことです。免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」があります。

「自然免疫」とは、病原体であるウイルスや細菌の一般的な特徴を捉えて生体が防御する仕組みであり、白血球の一部(好中球、マクロファージなど)が、体内に侵入した病原体を貪食します。「獲得免疫」とは、「自然免疫」より異物を効率よく排除する仕組みであり、抗体を使って病原体を排除する「B細胞」、B細胞が抗体を作るのを助ける「ヘルパーT細胞」、感染した細胞ごと病原体を排除する「キラーT細胞」などの細胞が関与しています(図1)。そして、B細胞やT細胞の一部が過去の感染を記憶した「記憶細胞」になると、同じ病原体が感染した際にたくさんの抗体やキラーT細胞を使って1回目よりも効率的に排除できるようになります。

つまり、ワクチン接種の目的は、これら記憶細胞を体に誘導することにあります。一般に免疫がついたと表現されるのは、記憶細胞が体の中にできたことを意味します。

図1takahashisensei_1.png

防御の盾となる抗体をつくる細胞

記憶細胞は主に4種類の細胞に分類できます(図2)。1つは抗体を作り続けることに特化した細胞で、「抗体産生細胞」と呼ばれています。抗体産生細胞の数に比例する量の抗体が体の中に存在し、盾のようにウイルスから体を守る役目を果たします。ワクチン接種により十分な量の抗体が予め準備されていれば、高い感染予防効果が得られます。"免疫イコール抗体"とイメージされている方がいるほど、抗体は免疫の防御力に重要な役割を担っているのです。

ただし、新型コロナワクチンの接種により作られた抗体産生細胞は次第に数が減り、半年以上経過すると抗体濃度はピーク時の約4分の1に低下することが確認されています(※1)。このように、抗体による防御の盾は時間と共に脆くなっていくことが分かってきました。

防御の盾を補強してくれる記憶細胞の存在

時間とともに抗体濃度が低下しても、記憶細胞の中には、感染後に新たに多量の抗体を作り出すものが存在します。これは「記憶B細胞」と呼ばれています。

また、別の記憶細胞である「記憶T細胞」は、記憶B細胞が抗体産生細胞に変化するのを助けるヘルパーT細胞や、感染した細胞ごとウイルスを排除するキラーT細胞になります。つまり、記憶細胞の中には複数種類の細胞が存在して、抗体産生細胞による防御を後方支援しています。

これら記憶細胞の中には、数が減らない細胞があることも分かってきました(※2)。抗体濃度が大きく低下しても、記憶細胞があるおかげで発症予防効果は一定レベル以上で保たれている可能性があります(※3)(※4)。それでも、予防効果は時間とともに低下するため(2回接種から2ヶ月未満:96%、4ヶ月から6ヶ月:84%)(※4)、100%に近づけるためには追加接種が必要となります。

図2takahashisensei_2.png

追加接種(3回目接種)について

2021年11月現在、諸外国では複数の国で追加接種が進められており、日本でも同年12月からの開始に向け、現在、準備が進められています。

2回目の接種から時間が経った方に追加接種を実施すると、2回目接種直後よりも高い抗体濃度を獲得することが報告されています(※5)。そして2回目接種のみのグループと比べて、3回目接種を受けると10万人あたりの重症化患者数が約12分の1に低下したケースもあります(※6)。

現在(2021年11月)、国内での新型コロナウイルスの感染状況は、以前に比べて落ち着きを見せていますが、今後再拡大するリスクも残されています。免疫の記憶力は時間とともに一部低下してしまいますが、追加接種により強化することは可能です。本コラムの内容も参考にして、3回目の接種をご検討ください。

(参考資料)
※1:N Engl J Med. 2021; Oct, Epub
(Waning Immune Humoral Response to BNT162b2 Covid-19 Vaccine over 6 Months)

※2:Science 2021; Oct 14:eabm0829
(mRNA vaccines induce durable immune memory to SARS-CoV-2 and variants of concern.)

※3:Lancet 2021; S0140-6736(21)02046-8
(Considerations in boosting COVID-19 vaccine immune responses)

※4:N Engl J Med 2021; 385:1761-1773
(Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine through 6 Months)

※5:N Engl J Med 2021; 385:1627-1629
(SARS-CoV-2 Neutralization with BNT162b2 Vaccine Dose 3)

※6:Lancet 2021; Oct 29:S0140-6736(21)02249-2
(Effectiveness of a third dose of the BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine for preventing severe outcomes in Israel: an observational study)

(注:本コラムに記載している内容は、筆者の見解となります。また、記載されている名称・呼称、および知見などは掲載時点のものです。)

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