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「ワクチン接種完了後の感染対策」ポイントとこれからの生活は?

「ワクチン接種完了後の感染対策」ポイントとこれからの生活は?

医療関連感染予防
聖路加国際病院 QIセンター 感染管理室

坂本 史衣
2021年11月05日

はじめに

日本で新型コロナワクチンの接種が始まったのは2021年2月。その後の8か月間で、1億8千万回を超える接種が行われ、全人口の70%以上が2回目の接種を完了(※1)しました。

ワクチンを接種する理由は人さまざまでしょうが、東京iCDCが2021年7月に行った調査では、都内在住の20~70代1,000人のうち約7割が、自分、そして、周りや社会にとっての感染リスクを下げるためにワクチンを接種すべきと回答しました。また、このうち、接種済みか接種予定の人の9割前後が、接種完了後もマスク着用などの感染対策を行うと答えました。

この調査では、感染予防のために接種をしてもなお、感染対策を継続すると答えた方が多かったわけですが、実際に接種を完了したら、どのようなことに気を付けて生活すればいいのでしょうか。

具体的な感染対策の内容についてお話する前に、そもそも接種完了後に感染対策が必要なのか、必要だとすればその理由について、
①現在主流となっているデルタ変異株の感染力
②デルタ変異株に対するワクチンの効果と持続期間
③ブレイクスルー感染(※2)が起きた場合の自分と周囲への影響
以上の3点をもとに、お伝えしたいと思います(※3)。
結論だけを知りたいという方は、「ワクチン接種完了後に行う感染対策は?」からお読みください。

※1:2021年10月30日時点
※2:ワクチン完了後に起こる感染
※3:2021年10月30日現在の知見に基づく

デルタ変異株の感染力

2021年10月現在、国内で検出される新型コロナウイルスのほぼ全てがデルタ変異株です。デルタ変異株の感染力は、従来株の約2倍、また、その後主流となったアルファ変異株の約1.6倍と推計されています。一般的に集団のワクチン接種率が高まると、ワクチンを接種できない人を含めて、感染がおこりにくくなります。しかし、デルタ変異株のように感染力が強いウイルスの場合、ワクチン接種率をかなり高い状態に維持することに加え、基本的な感染対策を行わないと、流行を低い水準に抑え込むことが難しくなります。

実際に、デルタ変異株の流行下では、ワクチン接種率が高齢者で90%、中高年で80%、20~30歳代でも70%に達し、かつ、基本的な感染対策を続けることで、ようやく年に1回、緊急事態宣言が出るか出ないか程度にまで感染者数や重症者数を減らせるという試算があります

期待されるワクチンの効果と持続期間

デルタ変異株にはまた、ワクチンの効果を弱めやすいという特徴があります。さらに、接種から時間が経つにつれて感染予防効果が弱まることを示すデータが、接種が先行した海外諸国から出てきています。

例えば、アメリカカタールで行われた大規模調査では、mRNAワクチン接種完了後1か月の時点では、デルタ変異株による感染(※4)を防ぐ効果は比較的高い(いずれもファイザー社、アメリカ93%、カタール78%)ものの、約4か月後には50%台、それ以降はさらに低下するとの結果が出ています。これらの調査では、重症化を防ぐ効果は半年後も90%程度に維持されていました。

しかし、イスラエルで行われた調査によると、60歳以上では、接種完了から半年以降に重症例の発生率が上昇する傾向がみられました。

これらの調査結果が示すのは、デルタ変異株に対する感染予防効果は、接種完了後の数か月間はそこそこ高いものの、完璧ではないということ。そして、時間の経過とともに効果が減弱するということです。重症化を防ぐ効果は、少なくとも半年間は高いまま維持されるようですが、それ以降は、特に高齢者では減弱する可能性があります。

※4:症状の有無にかかわらず検査陽性となることと定義

ブレイクスルー感染の感染力と感染可能期間

ブレイクスルー感染を起こした人からもウイルスが伝播することがありますが、感染可能期間は短縮されるようです。幸い、ブレイクスルー感染のほとんどは軽症ですみますが、高齢者や持病のある方は、重症化することがあるので、ワクチン接種が完了しても、感染しないよう特に注意が必要です。

やりすぎない感染対策は感染経路を知るところから

以上を踏まえると、社会のワクチン接種率を高く維持しつつ、ワクチン接種完了後も基本的な感染対策を継続することが、緊急事態宣言を避けながら、社会経済活動を続けていくために重要だと言えそうです。

ここでいう基本的対策というのは、過剰でも過少でもない感染対策です。そのような、ちょうどよい感染対策を行うには、ウイルスの感染経路をよく知り、ウイルスに感染経路を提供するような状況をなるべく作らないことがポイントになります。現在分かっている新型コロナウイルスの感染経路を図1に示します。

図1:新型コロナウイルスの感染経路(筆者作成)
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ワクチン接種完了後に行う感染対策は?

ウイルスの感染経路となる状況を避けるための具体策を以下に挙げます。
①接種対象年齢の同居者のワクチン接種を積極的に検討する。
  • 感染が起こる場所は家庭内が最多です。新型コロナウイルスは、発症日前後の無症状から軽症の時期に感染性が最も高く、また、家庭内では感染経路になりやすい場面が数多く生じるので、予防が困難です。
  • 接種を完了した同居者が増えるほど、家庭内で未接種者が感染するリスクが最大97%まで低下することを示した研究報告があります。ワクチン接種は接種対象年齢未満の子供や、ワクチンの成分に対するアレルギーがある方など、接種ができない同居者を守る手段になります。
  • 接種するかしないかは、複数の専門家のチェックを受けた、科学的根拠に基づいた情報発信をしている公的機関や団体などからの正確な情報に基づいて判断しましょう。

②同居者以外と概ね1m以内に近づくときには、不織布マスクを顔にフィットするように着用する(図2)
  • ポリウレタンマスクは鼻や口から出る飛沫を抑える効果も、吸い込むのを防ぐ効果も低いので避けましょう。
  • 布マスクよりは不織布マスクが勧められますが、肌荒れがあるなど不織布マスクが使えない場合は、布マスクの間に不織布シートをはさむとよいでしょう。

③換気の悪い場所に長時間滞在しない。

④3密(マスクを外して声を出している人が大勢いる混雑した屋内空間)を避ける。

⑤発熱がなくとも、体調がすぐれないときは人に会わない。

⑥外出先から戻ったとき、トイレのあと、食事の前などに石鹸と流水で手を洗うか、アルコール性手指消毒薬で手指を消毒する。
図2:マスク素材別の飛沫透過率 sakamotosensei_5-1.png

同居者以外との飲食をどうするか

飲食店でも家でも路上でも、飲食や喫煙などの場面におけるマスクを外した近距離での会話は、ウイルスにとって感染経路を提供する機会となりやすいことが知られています

ただ、そうはいっても、地域の流行が落ち着いていて、ワクチン接種も完了していれば、リスクを下げながら、同居者以外とも飲食(会食)を楽しみたいところではあります。100%の安全は保障できませんが、表1の中で当てはまる項目が多い会食ほど安全だといえますので、参考にしてください。

表1:リスクの低い会食の条件
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これからの生活

イギリスやイスラエルでは、ワクチン接種完了者が全人口の6割を超えたころから、感染対策をほぼ行わない生活を開始しましたが、その後間もなく感染者が増加に転じました。幸い重症者数や死者数は以前に比べると低水準ですが、例えば、人口が日本の約半分のイギリスでは連日120人から150人が新型コロナウイルス感染症により死亡しています。

人口が神奈川県に近いイスラエルでも、1日あたりの死者数が20人を超えていましたが、ワクチンの追加接種が進むにつれて減少に転じています。こうした海外の様子を参考にしながら、日本でもどのような形で社会経済活動を再開していくか、それに伴って発生する感染者数や死亡者数をどの程度まで許容するのか、模索が続くと思います。

ワクチン接種率を高く維持し、重症化を防ぐ治療薬をうまく使いながら流行をコントロールすることができれば、感染対策をさらに緩めることが可能になるでしょう。時間はかかりますが、確実に前進しています。しばらくは、できる人が、できる範囲で基本的な感染対策を続けていきましょう。

(注:本コラムに記載している内容は、筆者の見解となります)

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