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不妊になるって本当?妊娠中でも大丈夫?女性のための新型コロナワクチン(mRNAワクチン)解説

不妊になるって本当?妊娠中でも大丈夫?女性のための新型コロナワクチン(mRNAワクチン)解説

日本産科婦人科学会 SARS-CoV-2(新型コロナウイルス) 感染対策委員会 委員
日本産婦人科感染症学会 幹事(広報・編集担当)

相澤 志保子
2021年09月03日
新型コロナワクチンの接種が進み、既に多くの方が接種を受けています。しかし、妊娠を考えている女性や妊婦さんの中には、接種した方がいいのか、しない方がいいのか迷っている方もいらっしゃると思います。

そのため、本コラムではmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンについて、月経や妊娠、授乳など女性に関係する点について解説します。

なお、日本で承認されている新型コロナワクチンのうち、ファイザー社のワクチンと武田/モデルナ社のワクチンがmRNAワクチンです。アストラゼネカ社のワクチンはウイルスベクターワクチンであり、原則40歳以上の方が接種できます。
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妊娠を希望している方へ

mRNAワクチンで、不妊になるという科学的な根拠は全くありません。どういうわけか、ワクチンを接種すると不妊になる、という誤情報は古くからあるのですが、これまで使われているワクチンでも、接種が不妊の原因となった例はありません。

ラットを使って、接種したmRNAワクチンが体のどこに分布するのか調べた実験によると、ほとんどは接種した場所に留まり、一部は肝臓に集まりますが、卵巣にはほとんど到達しません(※1)。また、ラットにmRNAワクチンを接種した後に交配させて妊娠させた実験でも、接種したラットと、接種しなかったラットで妊娠率や赤ちゃんの数、大きさに差はありませんでした(※2)。ヒトでもmRNAワクチンの臨床試験中に妊娠した方もいらっしゃいます(※3)。

一方、接種の有無にかかわらず、不妊のカップルは約10組に1組と言われていますが、近年、妊娠を希望する年齢が上昇しているため実際はもっと多いかもしれません。男性側に原因がある場合と女性側に原因がある場合の割合は、ほぼ半々と言われています。もし、将来妊娠できるかどうか心配な場合には、定期的に産婦人科で検診を受けることをお勧めします。

月経とmRNAワクチン

月経中にmRNAワクチンを接種しても問題ありません。ただし、月経痛に対し、痛み止めの薬を飲んでいる方は、接種後の発熱や頭痛に対して解熱鎮痛薬を使う場合には同じような内容の薬を飲むことになりますので、薬の量が過剰にならないように気をつけてください。

接種そのものが月経周期や排卵に影響を与えることはありません。ただし、発熱やストレスによって、月経周期がずれたり、月経量が変化したりすることはあるかもしれません。

妊娠中のmRNAワクチン接種と新型コロナウイルス感染

アメリカ疾病対策センター(CDC)は妊婦さんへのmRNAワクチン接種を強く推奨しています(※5)。日本においても、妊婦さんは妊娠の時期を問わず接種をお勧めします(※6)。mRNAワクチンを接種した妊婦さんは接種していない妊婦さんよりも新型コロナウイルス感染のリスクが低いことが報告されています(※7)。

妊娠中、特に妊娠後期に新型コロナウイルスに感染すると、重症化しやすく、早産となるリスクが高いと言われています(※5)。もし、妊娠中に新型コロナウイルスに感染して重症化してしまうと、治療のために、妊娠37週未満であっても帝王切開で赤ちゃんを出さなければいけなくなることがあります。

新型コロナウイルスが子宮の中の赤ちゃんに感染することはほとんどありませんが、妊娠37週未満で生まれた赤ちゃんは、生まれた時期にもよりますが、子宮の外で生活する準備が十分にできていません。早産児は臓器の発達が不十分であるため、呼吸や哺乳が難しく、脳内出血、網膜症などのリスクがあり、感染症にもかかりやすくなります。また、早産児を管理できる医療施設は限られていますので、もともと分娩予定だった医療施設から別の施設で出産することになる可能性もあります。

もし、妊婦さんがmRNAワクチンを接種していれば、万が一感染しても重症化しないで無症状、あるいは軽症ですむかもしれません。その場合には、新型コロナウイルス感染症が治るのを待って、予定日近くに出産できる可能性があります。また、mRNAワクチンを接種した妊婦さんからは、胎盤を通して赤ちゃんに新型コロナウイルスに対する抗体が移行する(※8)ので、生まれたばかりの赤ちゃんを守ることができます。

これまでに新型コロナウイルスに感染した妊婦さんのデータによると、多くは家族内、特に夫やパートナーから感染することが多いようです。妊婦の夫やパートナーは感染予防に努めるとともに、積極的にワクチンを接種することを考えてください。

なお、妊娠中は風疹のワクチン(MRワクチン[M:麻しん、R:風しん])を接種することができません。これは、風疹のワクチンは「弱毒生ワクチン」という種類のワクチンで、病原性を弱めた風疹ウイルスが入っているので、胎児に影響が起きる可能性があるためです。mRNAワクチンには、ウイルスそのものは入っていないので、新型コロナウイルスに感染することはありません。

妊娠中のmRNAワクチン接種の影響

アメリカで行われたmRNAワクチンの接種を受けた35,691人の妊婦さんについての調査によると、発熱や倦怠感などの副反応が起きる頻度は妊娠していない女性と同程度でした。

また、mRNAワクチンを接種した後に妊娠を完了した827人のデータによると、流産、早産、胎児の発育不全、先天奇形、新生児死亡が起きる確率は、接種していない妊婦さんと変わりませんでした(※3)。イギリスからもmRNAワクチンを接種した妊婦さんと接種していない妊婦さんの流産率は変わらないとの報告があります(※9)。CDCもワクチン接種によって流産が増えたということは報告されていないとしています(※10)。

イスラエルからの報告でも、妊娠中にmRNAワクチンを接種して分娩に至った1387人と接種しなかった1427人で流産、死産、胎児の発育不全、母体の妊娠高血圧症候群などが起きた確率に差はありませんでした(※7)。

もし、妊娠中に接種して発熱や頭痛が起きた場合には、アセトアミノフェンを服用して構いません(※5)。

授乳とmRNAワクチン

授乳中の方もmRNAワクチンを接種できます。mRNAワクチンは、授乳中のお母さんの新型コロナウイルス感染症を予防します。授乳中のお母さんが新型コロナウイルス感染症になってしまうと、お母さんと赤ちゃんは濃厚に接触していますので、高い確率で赤ちゃんも感染してしまいます。

接種後もミルク(人工乳)に変更する必要はなく、通常通り授乳できます。接種後に授乳すると赤ちゃんがアレルギーになる、という誤情報がSNSなどで流れていますが、科学的な根拠は全くありません。mRNAワクチン自体は母乳中に分泌されません。一方、ワクチン接種によってお母さんの体の中に作られた新型コロナウイルスに対する抗体(IgA抗体)は母乳から分泌されますので(※11)、赤ちゃんを感染から守る効果が期待できます。

終わりに

新型コロナウイルス感染症から身を守るために、mRNAワクチンを接種することは重要です。しかし、健康上の理由から接種できない場合もありますので、心配な場合にはよく主治医に相談してください。

ワクチンの仕組みは、ウイルスに感染してしまった場合に、すぐに体内からウイルスを除去できるように、抗体や免疫記憶をあらかじめ体内に準備しておくというものです。感染しても体の中でウイルスがたくさん増える前に除去できれば、新型コロナウイルス感染症を発症したり、重症化したりすることを防ぐことができます。

mRNAワクチンは新型コロナウイルスが体の中に侵入することを100%防ぐわけではない、ということを忘れずに、mRNAワクチンを接種しても基本的な感染予防対策を続けてください。

(参考資料)
※1:薬物動態試験の概要文(ファイザー社のワクチン)
※2:Reprod Toxicol. 2021; 103: 28-35.
(Lack of effects on female fertility and prenatal and postnatal offspring development in rats with BNT162b2, a mRNA-based COVID-19 vaccine)
※3:N Engl J Med. 2021; 384(24): 2273-2282.
(Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons)
※4:不妊症(日本産科婦人科学会)
※5:CDC. COVID-19 Vaccines While Pregnant or Breastfeeding
※6:日本産科婦人科学会 日本産婦人科医会 日本産婦人科感染症学会, 妊産婦のみなさまへ 新型コロナウイルスワクチンについて(第2版)
  ・日本産科婦人科学会
  ・日本産婦人科医会
  ・日本産婦人科感染症学会
※7:JAMA. 2021 July.
(Association Between BNT162b2 Vaccination and Incidence of SARS-CoV-2 Infection in Pregnant Women)
※8:J Clin Invest. 2021; 131(13).
(Efficient maternal to neonatal transfer of antibodies against SARS-CoV-2 and BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine)
※9:Nat Rev Immunol. 2021; 21(4): 200-201.
(Are COVID-19 vaccines safe in pregnancy?)
※10:CDC. COVID-19 Vaccines for People Who Would Like to Have a Baby
※11:JAMA. 2021; 325(19): 2013-2014.
(SARS-CoV-2-Specific Antibodies in Breast Milk After COVID-19 Vaccination of Breastfeeding Women)

(注:本コラムに記載している内容は、筆者の見解となります。また、記載されている名称・呼称、および知見などは掲載時点のものです。)

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