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若者のワクチン接種、メリットとデメリットの考え方

若者のワクチン接種、メリットとデメリットの考え方

マウントサイナイ医科大学 老年医学科
コロワくんサポーターズ代表

山田 悠史
2021年08月03日
日常生活の中で、ワクチン接種のメリットに関するニュースよりもデメリットに関するニュースの方が、目にすることが多いかもしれません。このため、ワクチンのメリットよりもデメリットが大きく見えてきてしまう人も多いでしょう。

実際、これまでの新型コロナウイルスの感染者の報告では、若者における重症者や死者の報告は少なく、メリットは高齢者と比べれば相対的に小さくなります。

しかし、依然として若者がワクチン接種を受ける意義は高いと考えられます。それはなぜでしょうか。

ワクチンは若者の健康、命を守る

まず初めに、これまで10代でCOVID-19にかかった人の数は日本国内だけでも5万人を超えています。また、入院を要したお子さんも多く報告されています(日本小児科学会データベース

大半が軽症で済んでいるとはいえ、38度を超えるような高熱を出し、咳が2週間続いても、「軽症」に分類されます。「軽症」の言葉からくるイメージと実際に感染した人の苦しみは大きく異なるでしょう。また、感染した若者の中には、今も嗅覚や味覚障害、疲労感、記憶障害などの長引く症状(いわゆる後遺症)に苦しんでいる人がいるのが現状です。

幸い現時点(2021年8月3日)で、日本での10代の死亡例は報告されていませんが、より感染が拡大した米国では、390人以上の18歳未満の子どもがCOVID-19で亡くなったことも報告されています 。この中には、基礎疾患の有無が明らかでない子どもも含まれています。19~44歳をみると実に1万6000人もの人が命を落としています。

また、厚生労働省の報告によれば、日本国内でも、10歳未満の重症例や30代の死亡例が報告されています。

これらは、現在までの統計に基づくものですが、今後新たな変異を獲得したウイルスが誕生すると想定される中、それらが若い世代にどのような影響をもたらすのかについては明らかではありません。

今後も新型コロナウイルスの根絶は難しいと考えられる中、ウイルスへの免疫がない場合、いずれどこかのタイミングでウイルスに感染してしまうことを想定していなくてはいけません。そして、免疫のない中で感染する人が増えれば増えるほど、これまでご紹介したような悲しい報告を聞く可能性は高まるでしょう。

しかし、私たちは臨床試験でワクチンに高い有効性を確認できました。これは本当に幸運なことです。ワクチン接種を受け、免疫ができることによって、感染や発症の確率を大きく減らすことができるのです。また、仮に感染したり発症してしまったとしても、症状のある期間が短くなったり、重症化を防いだりする効果も期待できることがわかっています。

高齢者や持病のある家族を守る

また、ワクチンが守るのは、接種を受ける本人だけではありません。自分自身がワクチン接種を受けることで、感染しにくくなり、仮に感染してしまってもウイルスの量を低く抑える効果が知られているため、同居する家族や日常的に接する友人、同僚を守る効果も期待できます。身近に重症化リスクの高い持病のある人や高齢者がいれば、なおさらワクチンが重要になると言えるでしょう。

逆に言えば、ワクチンを接種しないことで、あなただけではなく周囲の人を危険にさらしてしまうかもしれません。実際に、600人以上の子どもが参加したサマーキャンプで200人以上の感染者が出て、そこから48人に二次感染が広がり、4人の大人の入院が生じたという事例報告もあります。

隣の席に座った高齢者、持病のある人は、皆誰かの大切な人であることを忘れないでください。ワクチン接種は周囲の人を守ることにもなるのです。

安全で安心感のある学校生活を取り戻し、生活を正常化する

さらに、ワクチン接種を受けるメリットは、自分が生活する地域全体にももたらされます。地域でより多くの人がワクチン接種を受けることによって、その地域の新型コロナウイルスに対する防御は高まり、感染伝播が減っていくことになります。仮にウイルスが外から持ち込まれてしまっても、その地域からウイルスが消えていくようになります。

そうして感染流行が収まれば、2019年以前の学校生活や学校外での生活を取り戻すことができます。また以前と同じように、部活動や文化祭といったイベントも不安なくできるようになるでしょう。マスクを外し、友人と安心して集まることのできる日々がやがて戻ってくることにつながるのです。

変異ウイルスが誕生する確率を減らすことができる

また、現在はいつ新たに懸念すべき変異ウイルスが誕生するかという不安の中での戦いですが、感染者数が増えれば増えるほど、変異が起こるリスクは上がるという点も大切なポイントです。逆に、いち早くワクチンが広がり、感染する人が減れば減るほど、変異ウイルスが誕生する確率を減らすことができます。

より多くの人がより早い段階でワクチン接種を受けることで、新たな変異ウイルス出現のリスクという点でもより安心した未来を描くことができるようになるのです。

リスクはあるが軽いものにとどまる

しかし、ワクチンにはデメリットもあります。これらの症状はワクチンに対する免疫応答の結果です。若い方の方が、高齢の方より頻度が高い傾向にあるようですが、ほとんどが2~3日以内に回復しています。

山田先生コラムイラスト.jpg ※N Engl J Med 2021; 385:239-250より作成

心筋炎のリスクをふまえてもメリットが圧倒的に上回る

加えて、日本で使用されているファイザー社、武田/モデルナ社のワクチン接種後の心筋炎が稀に報告されています。男性に多く、12~39歳の人に報告されてきています。しかし、頻度は100万人あたり12~32人程度と稀であり、仮に心筋炎を発症した人でもほとんどが軽症で経過したことが報告されています。

こういった背景から、米国CDCは、心筋炎のリスクをふまえた上でも依然としてワクチン接種が推奨されるとしています。また、厚生労働省の特設サイト「新型コロナワクチンQ&A」でも次のように解説しています。(2021年8月3日時点の掲載内容)

「ワクチン接種後に、急性心筋炎・心膜炎が国内外で報告されていることについて、心筋炎・心膜炎の専門家は以下のような見解を示しています。
・軽症の心筋炎・心膜炎は治癒する病気であり、仮にワクチン接種後にかかったとしても、循環器の通常の診療体制で対応できる。
・若年者では新型コロナウイルス感染症にかかった場合にも心筋炎になることがあり、新型コロナウイルス感染症にかかった場合には、ワクチンを接種した場合よりも、はるかに高い頻度で心筋炎がみられる。
・こうしたことから、ワクチン接種により感染の重症化予防を図るメリットの方が圧倒的に大きい。

心筋炎や心膜炎の典型的な症状としては、ワクチン接種後4日程度の間に、胸の痛みや息切れが出ることが想定されます。こうした症状が現れた場合は医療機関を受診することをお勧めします。」

長期的な副反応の可能性を懸念する声もありますが、ワクチンの成分が比較的短期間で体の中からなくなるという事実や、過去の様々な種類のワクチンの経験から、6週間までの観察で出現しないような新たな副反応が遅れて出現する可能性は極めて低いと考えられています

そのような根拠から、臨床試験では数万人の規模で最低2ヶ月間の安全性の確認が行われましたし、世界中で30億回を超える接種の経験からも、すでに高い安全性が確認されていると言ってよいでしょう。

ワクチンのリスクと感染症のリスクを比べる

ワクチンのリスクばかりを考えてしまう時、接種を受けてリスクをとるか、受けないでリスクを回避するかの選択と考えてしまいがちです。しかし、実際にはそうではありません。このウイルスは待っていればどこかに消えてなくなるものではありません。これからも共存していく可能性が高く、今後もこのウイルスによる感染症を患うリスクと隣り合わせで生活していかなければいけません。

ですから、ワクチン接種の選択は、ワクチンを受けるか、いずれ新型コロナウイルスに感染してしまうかの選択になるということです。また、感染のリスクは、重症化や長期にわたる後遺症のリスクでもあります。このように、ワクチンのリスクを考えるなら、ウイルスのリスクと比べる必要があります。ワクチンと新型コロナウイルス、どちらがより危険でしょうか。

そう考えると、若者がワクチン接種を受ける意義が見えてくるのではないかと思います。

(注:本コラムに記載している内容は、筆者の見解となります。また、記載されている名称・呼称、および知見などは掲載時点のものです。)

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